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 聖書外典偽典

 1.ヤコブ原福音書概説
 原福音書の原(プロートス)とは、正典福音書が記述しているイエスの誕生に先行するという意味がある。

 このヤコブ原福音書によると、イエスの母親マリアの父親はヨアキム、母親はアンナ(注1)。
 マリアの両親は、長い期間、子供が生まれなかった:長い間、子供に恵まれない家庭に、神の祝福で、子供が生まれると言うのは、アブラハムとサラの家庭(イサク)、エルカナとハンナの家庭(サムエル)、ザカリヤとエリサベツの家庭(洗礼者ヨハネ)に類似している。
 そこで、ヨアキム(マリアの父親)は、大変悲しみ、荒野で、40日40夜断食して、神に祈った。
 ヨアキムの妻アンナ(マリアの母親)も、月桂樹の下に座り、神に乞い願った。すると、天使(主の使い)が現れ、アンナが懐妊することを告げた。そこで、アンナは、自分が生んだ子供は、男女の性別に拘らず、神殿に捧げ、生涯、神に仕えさせることを約束した。

 ヨアキムとハンナとの間に生まれた女児マリア(イエスの母親)は、アンナが天使に約束した通り、3歳の時に、主の神殿に預けられた。
 マリアは、主の神殿で、鳩のように保護され、天使の手から食物を受け取っていたと言う。

 マリアが12歳になり、生理(月のさわり:レビ記15:20)が始まろうとした時、祭司たちは、「主の聖所を汚さぬために」、どうしたら良いか、協議して、大祭司ザカリヤ(将来の洗礼者ヨハネの父)に、主の支持を得るために、至聖所で祈願することを以来した。
 大祭司ザカリヤが、至聖所で、祈願したところ、天使(主の使い)が現れ、男やもめを集めて、杖を持たせ、主がしるしを誰か男性に示されたなら、マリアをその男性の妻とするように告げた。

 ヨセフ(イエスの法律上の父親)は、男やもめとして、杖を持って、神殿に集まった。
 大祭司ザカリヤ(将来の洗礼者ヨハネの父)は、男やもめが持参した杖を預かり、神殿で祈った後、杖を、それぞれの男やもめに戻したところ、最後に杖を戻されたヨセフの杖から、鳩が出て、ヨセフの頭上に舞い降りた。
 そこで、ヨセフが、主の処女マリアを保護する為に、マリアを神殿から引き取ると言うことに決まった(注2)。
 ヨセフは、男やもめで、他の妻が残した息子たちもおり、年を取っていたので、マリアを引き取ることを固辞したが、祭司から、神に口答えしてはいけないと、脅されて、マリアを引き取ることになった。
 ヨセフは、(主の御加護を信じて)マリアを家に残して、自分は、大工仕事(建物を建てる仕事)に家を出て、(仕事が終わると)家に戻る生活を送った。

 マリアが16歳になった、ある日、マリアが水汲みに行くと、天使(ガブリエル)が現れ、「今日は、恵まれた方よ、主はあなたと共においでです」と語りかけて来た。恐れたマリアは、家に帰ったが、天使は、家の中に入って来て、「あなたは主の言葉によって身ごもるでしょう」などと、告知した。マリアは、「主の御前にわたしは主のはしためです」などと、答えた。

 マリアは、神殿の祭司に、天使から受胎を告知されたことを伝えると、祭司は、マリアを祝福し、「あなたは地のすべての代で祝福されるだろう」と言った。
 それで、マリアは喜び、親戚のエリサベツの家に行った。そして、エリサベツの家に3カ月、滞在した(何故3ヶ月も滞在した?)。

 許婚のヨセフは、マリアが妊娠6カ月目となった時、自分の許婚であるマリアが、妊娠している(身ごもっている)ことに、気付いた。
 ヨセフは、マリアを神殿から引き取ったのに、守れなく、アダムの時、賛美の祈りをしている間に蛇が来て、一人でいたエバを騙したように注2)、誰か、家に入って来て、マリアの処女性を汚したと、考えた。
 そして、ヨセフは、「至聖所で暮し、天使の手から食物を受けていたあなた(マリア)なのに、どうして心を卑しめたのだ」と、マリアを問い質した。すると、マリアは、激しく泣いて、「わたしは潔白で男を知りません(私の身は清く、私は男を知らないのです)」、「わたしの主なる神は生きておられます。わたしはどうして(子供が)出来たのか知らないのです(私の主なる生ける神に誓って、どうして出来たのかわかりません)」と答えた。

 ヨセフは、マリアが(自分の子供でない子供を)妊娠していることを隠せば、主の律法違反をすることになると、恐れた。また、もしマリアが妊娠していることを明らかにすれば、姦通罪で、マリアは、死罪になってしまう(咎なき血を死の裁きに渡すことになる)と、恐れた。もしかしたら、マリアは、天使によって妊娠したのではないか注3)と、危惧した。そして(このように考え)、ヨセフは、密かに、マリアを離縁しようと考えた。
 しかし、その夜、ヨセフに、天使が夢で現れ、マリアは、聖霊によって、身ごもっていることを、告げた。そして、ヨセフは、(マリアを妻として迎い入れ、)マリアを守護した(子供を認知した)。

 律法学者アンナスが、マリアが妊娠していることに気付き、ヨセフが、密かに、マリアと床入りをして、律法違反をしたと考えて、祭司に訴えた(注2)。
 マリアは、「主なる生ける神に誓って、私は御前に清く、男を知りません(わたしの主なる神は生きておられます。わたしは御前に清く、男を知らないのです)」と、潔白を主張した。
 ヨセフも、「私の主なる生ける神に誓って、私は彼女のことでは潔白です(わたしの主なる神は生きておられます。わたしは彼女について潔白です)」と、
 祭司は、ヨセフとマリアに、「主の呪いの水」(民数記5:11-31)を飲ませたが、二人とも無事であった為、祭司は、二人を無罪放免した。

 ヨセフは、住民登録の為、身重のマリアを驢馬の鞍に乗せて、自分の息子に引っ張らせて、ナザレからベツレヘムに上って行った。
 ヨセフは、息子の登録と同時に、マリアを登録する心算だったが、マリアを自分の妻として登録するか、あるいは、自分の娘として登録するか、迷っていて(注2)、「主の日には主の欲したもうようになるだろう」と、考えていた。
 ベツレヘムへの途上、マリアは、産気付いて、洞窟で、イエスを出産した。そして、その洞窟は、輝く雲に覆われた。
 産婆が、サロメ(洞窟を通りかかった女性)に、「処女が自然では考えられないお産をしました」と証言した。サロメが、指を差し込んでマリアの状態を調べると、マリアの処女性を確認した。
 すると、東方の賢者(博士)たちが、東方で見た星に先導されて、出産したマリアがいる洞穴を訪れた。

 メシア誕生を知ったヘロデ王は、神殿にいる大祭司ザカリヤに、「お前はこどもをどこに隠した」と尋ねた。
 大祭司ザカリヤは、わたしの子がどこにいるか知りません」と答えた。
 その為、ヘロデ王は、怒って、大祭司ザカリヤを、神殿で、殺害してしまった(注4)。

 注1:イエスの系図が、マタイ1章とルカ3章23〜38節に記録されているが、両者は異なる。
 マタイ伝:ダビデ──ソロモン・・・・・・・・ヤコブ──ヨセフ──イエス
 ルカ伝:ダビデ──ナタン・・・・・・・・ヘリ──ヨセフ──イエス
 マタイ伝はヨセフの家系を、ルカ伝はマリヤの家系を、それぞれ記録したと言う解釈がある。
 ルカ伝はヨセフの父をヘリ(エリ)と書いているのは、 ヨセフの義父の名前を記したと言う解釈をすると、マリアの父親の名前は、ヨアキムでなく、ヘリ(エリ)と言うことになります。
 なお、ヘリ(エリ)はヤコブの親戚であり、ヤコブに子が出来ないうちに死んだ為に、家系を絶やさない為に、ヤコブの妻と結婚し、ヘリ(エリ)とヤコブの妻との間に、ヨセフが生まれたとする解釈もある。
 いずれにせよ、処女が懐胎することは有り得ないので、イエスの本当の父親は、洗礼ヨハネの父親の祭司ザカリアだったと言う説もある。

 注2:正典福音書では、「マリアはヨセフの妻と決まっていた」(マタイ1:18)と記録されているが、ヤコブ原福音書によれば、ヨセフは、神殿で育った処女マリアを、保護する為に、引き取ったことになる。そして、処女マリアを保護するべきヨセフが、公の祝福の前に床入りして、マリアを身ごもらせたとすると、重大な律法違反であると、律法学者アンナスたちは、考えた。
 ヨセフ自身も、住民登録の為、ベツレヘムへ上る途中で、マリアを自分の妻として登録するか、あるいは、自分の娘として登録するか、迷っていた。
 なお、第19章には、マリア出産に立ち会った産婆に対して、ヨセフは、マリアに関して、「わたしのいいなずけ(許婚)です」、「マリアといって、主の神殿で育てられ、わたしは彼女を妻にするくじを引き当てたのですが、わたしの妻ではありません。けれども聖霊によって身ごもっているのです」と答えている。

 注3:グノーシス的文書では、アダムの留守中に、エバは、蛇(悪魔)と姦淫を行ったと、考えられている場合がある。

 注4:当時の社会情勢では、神殿と言えども、安全な場所でなかった。大祭司ザカリヤが神殿の前庭(燔祭の祭壇の傍ら)で殺害されたことは、イエスの言葉からも、伺い知れる。
 マタイ 25:35 それは義人アベルの血からこのかた、神殿と祭壇との間で殺されたバラキアの子ザカリアの血に至るまで、地上で流されるすべての正しい血の報復があなたがたの上に来るためです。
 また、東方の賢者(博士)から、「ユダヤ人の王」が誕生したことを知ったヘロデ王は、自分の支配を維持する為に、誕生した「ユダヤ人の王」を抹殺する為、ベツレヘム近辺の2歳以下の男子を、ひとり残さず殺させたことが、マタイ2:16に記録されている。
 イエスの母マリアが、12歳の時に、神殿から、「主の処女を保護するため」に、ヨセフに引き取らせたのは、マリアを、先妻の息子もいる世俗の大工(ヨセフ)の“妻”とすることで、生まれて来るイエスの存在をカモフラージュし、イエスの安全を確保すると言う神の計画(作戦)だったように、思われる。
 参考文献
 ・川村輝典:聖書外典偽典6 新約外典I 日本聖書学研究所編(教文館、1998年)
 ・荒井献、八木誠一、他訳:新約聖書外典 (講談社,2004年)
 ・日本聖書協会の新共同訳聖書
 ・日本聖書刊行会の新改訳聖書
 ・フランシスコ会聖書研究所(サンパウロ発行所)の新約聖書

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